東京都立両国高等学校 (page 2)

日本人もネイティブと対等にやりとりできるという
モデルを見せる

ALTを通じて、いろいろな国の人のものの見方を学ぶ

TTの授業で、日本人教員とALTそれぞれの役割は何でしょう?

(IMG)TTの授業
布村先生:

授業の進め方はある程度型が決まっているので、進行は主に私が行って、その中でALTにうまく入ってもらって生徒に英語でのやりとりを促していただいています。また、ALTは日本ではない国の文化を知っている代表者でもあるので、「日本ではこれは当たり前だけどALTの出身の国ではどうなのか?」などの質問を私がどんどんするようにしています。すると生徒は、いかに自分がもっている常識が狭いか少しずつ気づいていきます。さらに、イギリス人の先生とアメリカ人の先生では発想が違っていたりするので、いろいろな先生を通していろいろなものの見方を学ぶことができて、生徒たちはとてもラッキーだと思います。

TTの授業のメリットは何でしょう?

布村先生:

ネイティブと日本人が英語でやりとりするモデルをすぐに見せられることです。こういう会話をやってね、というときに、モデルを見せることで、日本人もああいう風にネイティブとやりとりができる、自分もできるんだ、という気持ちを生徒に与えることができます。あとはやはり、本物を見せられるということ。教科書はどうしても書き直していたりしますが、身近な本物、生の素材に触れられることは生徒にとって英語を使うモチベーションが一番高まると思います。また、私自身も生の英語を聞ける、本当にナチュラルな表現なのか、ということを直接聞くことができるというメリットもあります。

TTの授業や指導計画を作る上で苦労することはありますか?

布村先生:

日本人教員とALTで、こういうことを次の授業に生かしていこう、というやりとりをする時間がもっととれればいいのですが、お互い授業時間外も忙しいのでなかなかできないことでしょうか。ALTの皆さんもいろいろなアイデアをもっていらっしゃるので、「このアクティビティを入れてみよう。」と相談したいのですが、現状はALTの意見を取り入れきれないところが悩みですね。

TTの授業例を校内の先生方や他校の先生方と共有していますか?

布村先生:

校内では先生同士で、お互いの授業を見に行ったりしています。また、本校はいろいろな学校の先生の授業を撮ったビデオを見ながら参加者でディスカッションする「授業研究会」を月に1回開いています。いろいろな授業を見て分析することは、自分の授業を振り返ることにもなります。私も何回かに一度は必ず自分の授業を研究会で見てもらっていますが、すごく役に立っています。

英語でなんとか伝えようとする気持ちが大事

両国高等学校では英語の授業にTTを導入し現在はほとんどがTTということですが、TTを取り入れてから変わったこと、良くなったことは何でしょう?

布村先生:

ALTがつく前の授業では、生徒からどうしても日本語が出てきてしまうことが多く、なんとかそれを防ぎたいと思っていました。そんな時にALTが来ることになり、「外国人の先生が分からない言語で私たちが話すのは失礼だよね。」「外国人の先生に失礼だから全部英語にしましょう。」ということになりました。その結果、生徒たちの中でより一層英語でのやりとりを徹底しなければならないという気持ちが強くなったと感じますね。自分が話したことが間違っていたとしてもALTがなんとか理解してくれようとするので、「言わないより何でも言った方が得だ。」「なんとか伝えよう。」という気持ちが芽生えたと思います。

今回、一緒に組んだALTのフォレスト先生も生徒に人気でしたね?

(IMG)フォレスト先生
布村先生:

そうですね。フォレスト先生は声が大きくて常にナチュラルスピードで話す方ですが、実は生徒たちは最初、そんなフォレスト先生を怖がっていたんです。ですが、毎日接していくうちにいい人だと思ってコミュニケーションをとれるようになりました。年に数回しか来ないネイティブだと、最初に怖いと思ったら怖いままで終わってしまいますが、本当はこういう人なんだというところまで人柄を感じることができるというのも、通年で担当してもらうことの良い点だと思います。

最後に、TTの授業のこれからの課題はありますか?

布村先生:

日本人教員がALTに授業を丸投げしてしまうケースがあるということです。ALTの時間だからといって1時間全部をALTに任せてしまうと、ALTも、「生徒を把握しているのは日本人教員なのになぜ何も言ってくれないんだ。」と不満をもつということが起こります。そういう雰囲気は生徒にも伝わるもので、「先生は英語がしゃべれないからALTとしゃべらないんだ。」「英語の先生も英語をしゃべらないのに、何で私たちが英語をしゃべらないといけないんだ。」と思ってしまいます。ですから、日本人教員とALTがきちっと話をして授業を組み立てるという意識を日本人の側がもち、日本人教員が堂々と、間違っていてもいいから英語でしゃべるほうがいいんだという姿を見せてあげないといけないなと思います。

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